東京高等裁判所 昭和25年(う)3667号 判決
原判決をみると銃砲等所持禁止令第二条のみを適用し同令第一条を掲げていないことは所論のとおりである。しかし同令第一条が同令違反罪の構成要件を定めたに対しその違反に対する罰則を規定したものが即ち同令第二条であるから、右第二条を適用したことは同令第一条違反の行為のあつたことを当然の前提とするもので間接的に同令第一条を適用した趣旨であること明らかであるから右罰則の適用のみでは完全とはいえないまでも判決の理由不備とはいえないし、いわんや右第一条の適用を明示しなかつたことが判決に影響を及ぼすとはいえない。所論はその理由がない。同第五点について。
(中略)
(ハ)原審第一回公判調書をみると検察官は伊藤ヨシ、西山福松の各盜難被害届の取調を請求したとの記載があるのみでその謄本の証拠調請求をしたとは認められないから盜難被害届原本について証拠調が行われたものと推定せられる。しかるに本件記録に編綴されているものは明らかに司法巡査小野寺功作成の伊藤西山両名の盜難被害届謄本であるに拘らず、原本に代えて謄本を提出するについて裁判所の許可を得た形跡はないのであるから、証拠調の行われた盜難被害届を裁判所に提出せず、勝手にその謄本を提出したものであり、裁判所としては右謄本を受理すべきではないに拘らず之を受理して記録に編綴したものと認められその手続が違法であることは明らかである。或は原審は右謄本を証拠調の行われた原本と見誤つて記録に編綴したのかも知れない。しかしそうすると原判決が、伊藤、西山の各盜難被害届として証拠に引用したものはその原本に非ずして実は記録編綴の謄本に依拠しその記載を原本と誤り引用したのではないかと推察され得るわけで原審としては証拠に供すべからざるものを実質的に証拠とした違法があるものと断ぜねばならないこととなる。してみれば原審の前記盜難被害届を証拠に採用する手続が違法であるか、或は証拠とすべからざるものを証拠とした違法があるというべきであるが飜つて按ずるに原判示第二の窃盜の事実は右伊藤ヨシ西山福松提出の各盜難被害届を除外しても原判決引用の爾余の各証拠によつて認定できるのであるから前記違法は結局判決に影響を及ぼすことがないものというべきで論旨はその理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)